コロナ条例
施設名公表に
慎重論

2020年10月6日付 都政新報
コロナ条例
施設名公表に慎重論
都民ファ罰則化案にけん制も

都議会第3回定例会の常任委員会が2日に開かれ、厚生委員会では都が提出した新型コロナ感染症対策条例改正案の審議が行われた。同改正案は、都民や事業者が新型コロナに感染した場合に自宅や病院などでの療養を努力義務化する内容だが、都民ファーストの会が4定で罰則規定を盛り込んだ独自条例案を準備中。この日の委員会では都民ファが罰則の必要性を訴えた一方で、他会派からは暗に罰則化をけん制する動きも見られた。また、努力義務化を慎重に進めるべきとの意見も相次いだ。

■都民の理解・協力不可欠

都の条例改正案では、都民・事業者の責務として新型コロナに感染した場合は療養に専念してもらい、みだりに外出をしない」ことなどを努力義務化する。この一方で、都民ファは9月に、療養に専念せず感染を発生させた場合などには行政罰として5万円の過料を徴収する規定を盛り込んだ独自の新型コロナ特措条 例案を発表し、第4回定例会に議員提出議案として提出を目指す考えを示している。

都民ファの岡本光樹は、コロナ対策に対する疑間に「説得力ある形で答え、理解してもらい、 新型コロナ対策を浸透させる必要がある」と述べ、罰則化の必要性を訴えた。

岡本氏は都民ファ条例案について、保健所からの療養の協力要請などに応じずに、他人に感染させた場合に罰則を科すものと説明し、「処罰対象は限定している」と強調。 他人への感染の証明については、「多くが疑問に思う点だが、推認や間接事実の積み上げで証明できるケースもある」と主張し、「努力義務をしっかり徹底・周知し、今後の罰則付き条例の必要性にも検討を深めたい」と、都条例の改正を都民ファ条例案の成立につなげていく意向を示した。

これに対し、自民党の小宮安里氏は「感染することは罪ではない」と反論。罰則の必要性に対する都の認識を確認した上で、「人と人との対立を扇動するような偏った制度とならないように」と釘を指し、暗に罰則化を牽制した。

また都条例案に盛り込まれた都の責務として感染者が利用するなどした施設名の公表にも「情報公開と並行して重要なのが個人情報保護。風評被害や差別を懸念する声が上がっている」と指摘し、慎重な姿勢を取るよう求めた。

公明党の小林健二氏は 都改正案に対して、「努力義務を設けるのに都民の理解と協力は不可欠。多くの都民に分かりやすく発信を」と注文を付けた。

一方、改正案に反対する意向を示したのが共産党だ。パプリックコメントの期間が極端に短い点や、改正の専決処分の認定がなされていない段階で今回の2度目の改正案を提出したプロセスを問題視。白石民男氏は「通院などで外出が必要な人もおり、安静に療養できる支援策を講じることが先決」と主張した。

東京みらいの齋藤礼伊奈氏は、パプコメでも罰則化への賛否が分かれていたことから、「新型コロナ対策に対する取り組みや考え方が地域や事業者、個人ごとに差が出ている中で、注意深く妥当性や必要性を議論していかねばならない」との言及にとどめた。

都福祉保健局は罰則の是非に対する評価は避けたものの、「新型コロナ特措法では自由と権利の制限を必要最小限としており、法の規定に基づき実施している」感染症対策部)などと答弁。また、「努力義務に都民の理解と協力は不可決」との認識を示し、都公式サイトや広報紙で改正内容の周知を図る考えを示した。

■中止なら解約料負担
他方、経済・港湾委員会では、都が補正予算案に追加計上している都内観光の支援事業について、新型コロナの感染拡大を受けて中止する場合は都がキャンセル料の一部を負担する考えを明らかにした。

同事業では、国の観光振興策「GoTOトラベル」キャンペーンに 都内の旅行商品が追加されたことを受け、都民が都内に宿泊する際に1泊5000円を助成するもので、産業労働局は「助成額を上限に、キャンセル料の一部を都が負担する方向で検討している」(観光部)と明かした。都民ファの自戸太朗氏への答弁。