小池知事との協調焦点
自民都議補選で全勝


2020年7月14日付 日本経済新聞より
7月5日投開票の東京都知事選で小池百合子知事が再選を決めた。同日の都議補選は自民党が4 選挙区で全勝した。民意は小池氏、自民双方に新型コロナウイルス対策の着実な実施を託したといえる。小池氏の初当選以来、都議会で対立関係にあった両者が政策遂行で協力できるか注目される。
「366万票という望外の支援をいただいた」。小池氏は投開票翌日の6日朝、結果についてこうコメントした。これで参院選、衆院選、知事選と11回の選挙で無敗。今回は得票率59.7%と他候補を圧倒した。
一方、自民は都議会で4議席増の26議席とし、公明党(23議席)を抜いて第2党となった。「経営の悪化する医療機関へ都が独自支援を」「家賃支援は都として上乗せを」。都議会自民の幹部は7日に小池氏と面会し、補正予算案でのコロナ対策を要望した。
この日は「知事与党」の都民ファーストの会と公明もそれぞれ知事に要望。投開票2日後の面会はコロナ対策での小池氏と自民との協調を印象づけた。小池氏は9日に公表した予算案で自民の要望にも配慮をみせた。 2017年の都議選で小池氏の率いる都民フが躍進し自民が惨敗して以来、定数127の都議会は50議席の最大会派、都民フと公明が運営を主導してきた。ただ最近は変化が見られ、ある都幹部は「各部局の自民への根回しが増えた」と話す。今後、都財政は税収の落ち込みに伴う財源不足が懸念され、歳出削減や財源捻出といったテーマで議会側の幅広い理解が必要になる。小池氏と自民が政策面で歩み寄るかどうかが焦点だ。
ただ、都議レベルで自民と都民フの関係は微妙だ。21年7月任期満了の都議選で、自民のある都議は「都民フを追い込む。全面対決だ」と対立姿勢を隠さない。都議補選も北区では自民と都民フが激突し自民が勝利した。
米国に「コートテール効果」という政治用語がある。人気やカリスマ性のある大統領が存在するとその与党が議会選で有利になるという説で、大統領のコートの裾に候補者が引っ張られるという比喩だ。都政に例えると、知事は直接選挙の大統領といえる。
北区では都民フの候補者は小池氏との関係の近さを強調したが、17年都議選のようなコートテール効果は見られなかった。都民フのある都議は「このままでは来年の選挙は大変になる」と身構える。
有権者は知事選と都議補選を通じて、小池氏、自民双方に絶妙なバランスのメッセージを示したともいえる。それぞれに近い東京都医師会も「医療政策で相違はないのではないか。一致してコロナ対策に臨んでほしい」(尾崎治夫会長)とする。
この3年間、都民フと自民の間には議会運営の場で小競り合いもみられた。1年後の都議選を見据え対立の火種は残るが、感染者が増え続けるなか、都政がいま取り組むべき課題は明白だ。小池氏、各党ともコロナという目下の課題に協調して臨むべきだろう。(亀真奈文)